エッセイ 2002.4~2010.1
旧山邑家住宅
20世紀の巨匠の住宅
芦屋でアメリカ建築家の巨匠の住宅が見れます
阪神間、芦屋に20世紀の巨匠、フランク・ロイド・ライト(1867-1959)の設計した住宅を見ることができます
ライトは東京帝国ホテルも手がけたアメリカの建築家です
そのホテルは、現在は解体され明治村に一部が保存公開されています
自然の中に融合して建つ建築~有機的建築~をつくることで知られています
芦屋川の向こう山手に緑の中から顔を出しているのが山邑邸です
樹木で覆われたアプローチの先にあります
4階には食堂から出れる大きなバルコニー、そこからは眼下の町が見渡せます
建物の隅々まで設計されています 彫刻された大谷石が装飾的に使われています
芦屋川沿いはこの季節桜が見事に咲きほこり、ピンク色のトンネルを作ります
山邑邸は緑の中に埋もれて建っていて暖炉の煙突だけが顔を出しています
樹木で覆われた坂を上って行くと車寄せのある玄関に至ります
玄関から意外と低い階段、廊下を通っていき扉を開けると、ぱっと天井の高いリビングが表れます
窓が大きくとられているせいもあって明るく開放的です
そのメリハリが劇的な空間を生み出しています
斜面地にあるため内部空間は所どころ数段の階段でつながれています
地形に合わせて「く」の字型になった間取りを、段差をうまく利用して新たなシークエンスを生んでいます
時には回遊でき、視線の変化もあり、迷路空間のようです
それは空間の襞を感じます
リビングはバルコニーとつながっていて、眼下に芦屋のまちが広がります
外国人建築家がつくったものでありながら、われわれ日本人も居心地のよさを感じるのは、ライトが日本人の持つ自然観をよく理解し、また人間的なスケールを大切にしているがゆえでしょう
久しぶりに行くと山邑邸へ向かう坂が命名されていました
なお毎年雛祭りの時期には、山邑家に伝わるひな人形が一般公開されています (2008.4.3)
原風景
改めて見る伏見の町並み
現在の宇治川派流域は美しく修景されています
生まれ育った伏見へ帰った際に、久しぶりにゆっくりと、わが町を歩いてみました
酒蔵が保存再生されて今も使われています
私が子どもの頃も自転車でよく通ってた見慣れた町家風景です
子どものころは、友だちの家に行くのも、駄菓子屋に行くのも、公園に遊びに行くのにも、買い物に行くのにも、こうした格子のある古い家の前を通っていったものでした
あいにく私の実家は町家ではないのですが、近所のこうした風景は当たり前のものでした
子どものころは当たり前の風景も心に刷り込まれていたようで、今の私のデザインの原点になっています
十石屋形船、長建寺の竜宮門、寺田屋
三味線を教えている小粋な町家、京阪中書島駅近くのモダン/タイル張りの色鮮やかな住宅、銭湯
現代的な建物への建て替えも格子をモチーフにデザインされています (2008.3.25)
おばちゃんのアメ村~石切さん
神さんのワンダーランド
石切神社 神社に行くまでの参道は大勢の人でにぎやいでいます
初詣に東大阪にある石切神社へ行ってきました
近鉄電車石切駅で降りて石切さんに行くまでの坂道の参道は楽しい道空間です
よく落語の世界では、神社の参道が楽しく描かれていますが、ここ石切さんもそうした賑やかな空間です
初詣でなくともここを訪れる人は多いです
参道途中には大仏さん、水かけ不動さんがあったり、占いやさんも多くあります
おばちゃんの洋品店やお土産の薬屋さん、お餅屋さん、佃煮やさんなどが続きます
おばちゃんでなくとも、思わず立ち寄ってしまいたくなります
東京巣鴨地蔵通り商店街周辺は、「おばあちゃんの原宿」と呼ばれているそうですが、さしずめ東大阪の石切さんは「おばちゃんのアメ村」って感じでしょうか
おばちゃんたちが石切さんにお参りに行く途中、思わず覗いてみたくなるお店が並んでいて、活気がある参道です
いろんな神さんが途中途中に祀ってあり、悩み事に相談にのってくれる手相見や占いやさんが集まっています
昔ながらの漬物やさん、佃煮やさん、お餅屋さんなどもなつかしい、店の人とのやり取りが楽しい町並みです
娯楽が少なかった昔、こうした参道空間が庶民の憩いの場だったんだなって、今も楽しい空間を進んでいきます
遊園地やゲームセンターなど現代の娯楽とは違った人と人とのふれあいを感じられる人情味のある街が大好きになりました (2008.1.12)
謹賀新年~子年
スマイルねずみ 世界の平和をこめて
ニコッとほほ笑めばみんな幸せな気分になれる
少し余裕を持っていきたいものです
今年もよろしくお願いします (2008.1.1)
京都の街路型住居
祭りの間、ギャラリーに変化する町
路地にぶら下げられた鉾町の提灯
鉾町に建ち並ぶ町家は、この日は格子戸越しに家に伝わるお宝を披露する場になります
路地の奥にもギャラリーがしつらえられていて職人の手による工芸品の数々を見て楽しむことができます
前回は台北の町並みについて書きましたが、今回は京都の町についてです
祇園祭の宵山に鉾の町を訪れました
町々の鉾が立ち並ぶ通りを人の川に流されながら進んでいきます
道行く人は鉾の素晴らしさを楽しむとともに町家衆が披露する工芸品「お宝」を楽しむことができます
その通りに面する町家の格子の奥の間にその展示品を見ることができます
狩野家の描く屏風であったり、金屏風とともによろいが飾ってあったりします
また提灯に導かれて路地を入っていくと蔵に刺しゅうの見事なタペストリーやじゅうたん、左甚五郎の手仕事を見ることができます
こうして祇園さんには町家もギャラリーとしてしつらえられます
背景の幕をしつらえ、提灯を吊り、祭りのために飾りたてます
日常生活を営んでいるケの空間が展示空間というハレの場に変貌します
日頃、表には控えめな京都人がこの日ばかりは道行く人に「どうぞ見ていっておくれやす」と、わが家を開放します
京都時間に合わせてぶらぶら歩いていると、町に美術館などなかった往事の賑わいがよみがえってきます
町に暮らす人である個人の粋さが町を形つくってるように感じます
厄除けのちまき、ろうそくを売る子どもたちの歌声も祇園さんの空間をつくります
♪ はちまんさんのやくよけの おまもりはこれよりでます ♪
ごしんじんのおんたけさまは うけておかえりなされましょ ♪
ろうそくいっちょうけんじられましょ ろうそくいっちょうどうですかあ~ ♪ (2007.8.6)
台湾の街路型建物
台湾 共同通路
当然ながら漢字ばっかりの看板
1階部分は誰もが通れるアーケードになっています お店も出します
雨の日も濡れずにすみます 現代的なショッピングセンターにもむかしからの形式は活かされています
台湾台北に行ってきました
台北の街なかの街路沿いに建つ建物は独特の形式があります
道路いっぱいに建てられていても、建物1階部分は誰もが通れる歩道として使われています
2階より上部は建物が張り出していて、一種の屋根付きアーケードになっています
郊外の町でもこの形式の建物をよく見ました
1階部分は店舗として使われているケースが多く、活気もあります
雨の日も濡れずに移動ができてとても便利です
アーケードにベンチを置いておしゃべりの場所にしていることもあります
建物の一部を公共空間として提供しているのです
公共と私的な空間があいまいに交じり合う空間が町を豊かにしているように感じます
ベンチもあります (2007.7.9)
今も残る江戸のおもかげ
埼玉県 川越市
街中には江戸から残る民家が数多くあります 蔵の窓は分厚いしっくい塗りです
モダンな建物が時代の変化を感じさせます
各々の時代の建物が共存しています 通りの車がけっこう多いのです
通りによっては電柱を埋めてなくすことで美しい町をつくっています
川越に行ってきました
この町は、ノスタルジックななつかしい気分を求めて多くの観光客を集めています
駅の案内所で町の歩き方を教えてくれた係りのおじさんからもこの町を愛している雰囲気が感じられました
川越は、江戸時代からの美しい民家(町家)が多く残る美しい町並みをもっています
この町を訪れると、さながら時代劇映画のセットに迷い込んだようです
セットでない点は、それらの建物は単なる書き割りではなく、お店として今なお使われていることです
博物館の展示物のように動かないものではなく、活き活きとしたライブな町なのです
この町には、お祭りも350年間続いています
各町々にある豪華絢爛な山車(だし)が町をねり歩く川越祭りで、10月に行われます
祭りの様子や山車の一部は、川越まつり会館で見ることができます
その山車の素晴らしい装飾を見ると分かります、町に残る立派な民家が今なおその姿をとどめている理由が
立派な仕事を行う大工が、この町には確実に存在していました (2007.3.7)